観るものと、生活の日記

NODA・MAP「オイル」

NODA・MAP「オイル」
★★


2003年6月19日@大阪近鉄劇場 最後列

作・演出:野田秀樹
出演者:松たか子 藤原竜也 小林聡美 片桐はいり 山口紗弥加
    北村有起哉 橋本じゅん 進藤健太郎 小手伸也 山中 崇
    越志マニング 野田秀樹



(あら筋)

1945年の島根県。電話交換手の富士(松たか子)は、死んだ人や神と交信している。
米国へ逃亡するため脱走したヤマト(藤原竜也)がゼロ戦で不時着。
戦争は敗戦に終わり、島根はなぜかマッカーサーではなく日系人マッサーカー
(小林聡美)に支配される。ガムを噛み、ジャズを聞き、瞬く間にアメリカに
染まっていく日本人に、富士は憤りを感じていた。
富士は石油の出る場所を県民に教えるなど、神がかった行動を取るように なる。
しかし石油は不時着したゼロ戦から盗まれたものだった。
広島の原爆で弟を殺された富士は言う。
「愛する人を殺されたら復讐する」「アメリカは8月に原爆を落としたから
9月に片道分だけオイルを積んだ飛行機を2機飛ばして復讐しましょう」と。
時間は原爆投下直後に戻り、富士は「恨みには時効があるの?」と
遺体の間をさまよう。


(感想)

 チケットはe+でA席を予約。手数料を払うのに最後列だったためちょっと不満
だったんですけど、一般発売ではマトモに取れる状態でなかったようで
観られるだけマシだった模様。
それでも近鉄劇場は古く、奈落のように段差があり、席は狭い上、機材の隣
だったので、「この座席で7千円かぁ」と思いかけながら
「いや内容さえ良ければ」と思いなおしたのですが・・・。

 「パンドラの鐘」のような舞台を期待しすぎでいた私には「うーん」でした。
そして込められていたテーマにも「うーん?」でした。納得いかなかったんです。

内容は「パンドラの鐘」の補足のような話でした。
初めて生で観た野田作品が「補足」か・・・。という残念。
パンドラの鐘のようなものを、といっても期待していたのはあのように
「最小限のセットを上手く使いまわし、独特の衣装を着込み、
オブラートにくるみつつ段々テーマが分かって、それでひどく感動させる。」
ところであって、決して「同じような話」まして、作品自体の補足では
なかったんですよね。

合う合わないもある訳ですが、今回のテーマはパンドラの時とは違い、
ナショナリズムに傾いて感じるところもあり・・・それが気がかりでした。
「被害を忘れてはいけないのも、すぐ流されるのが変なのも分かるけど、
報復していい訳じゃないし、国の加害の方はまるで取り上げてない。」
のが気になったんです。長いものに巻かれろって風潮はすごく感じるけど
野田さんなどが言うように、自虐的になってるとは全然感じてないんですよね。
アンコールは3回、S席での総立ちを見ながらやはりちょっと不安に
なりました。終わった後MLの感想や雑誌等見ても、「とても感動した」
という人が多く否定的な意見としては、せいぜい「重く感じる」という人が
いたくらいでしたが・・・。
HPの感想で一つ同じ意見の方を見つけ「私だけじゃなかった」と
少し安心しました。

 それにあまりにテーマがあからさまだったり、言葉がはっきり使われている
舞台は苦手ということもあるんです。

 それから、野田さんがあまり動き回らなかったのも残念でした。
「もうトシで仕方ないの?」と思ったのだけど、そういう訳でも
ないようで、なぜ今回に限って動きが少なかったのでしょう(涙)

  役者さんは全員、驚くほど上手かったです。
舞台の印象がなかった小林聡美さんや山口紗弥加さんもかなり素敵だし、
片桐はいりさんや橋本じゅんさんは面白いし、何より松たか子さんは
役がのりうつってるかのよう。
長く膨大なセリフでも、誰も一切かまない。間違えない。
そんな素晴らしい役者さんたちばかり見れたのはよかったですかね。

(舞台の中身に感動できたら、ちょっとくらい間違えるのはいいのですけど…。
必要性が分からない程長いセリフを、バシっといえても
「スゴイけど、これだけ言えるぞ!って見世物みたい?」とも思えちゃうから。)

 全体的には残念ながら「うーん7千円ちょっと、高かったなァ」
になってしまいました。



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